児童・青年が個人道徳(person-moral)の場面において道徳的義務感と自己決定権意識をどのように発達させるのかを明らかにするために、調査項目の作成と翻訳、実際の調査実施の手配などを行った。2000年10月から11月にかけて、日本と中国で、大学生を対象にして、社会的領域概念(道徳、慣習、個人)における行為の悪さ評定や自己決定権意識と権威概念、自己犠牲と自己優先に対する意識などの調査を実施した。その結果、(1)日本でも中国でも、最も悪いとされる行為は、道徳領域つづいて慣習領域の行為であることがわかった。しかし、道徳領域を除いて、慣習、自己管理、趣味、友達、外見の領域では、中国の青年の方が悪いと判断していた。(2)親権威の受容は、道徳や慣習領域では高いものの、それ以外の領域では低く、中国の青年の方が道徳や慣習以外の領域で親権威を受容する傾向が認められた。(3)自己優先の決定権について、総じて日本の青年の方が認めていることが明らかになった。なお、この調査結果については、さらに詳しい分析をすすめているところである。 中国の中学生ならびに小学生についての調査も実施したが、現在データを整理中である。また、幼児の保護者に対して、子どもにどのような期待と信念を持ってしつけにあたっているのか、および日常生活の中でどのような社会的ルールを伝えているのかを調査し、中国での社会道徳的発達環境を検討しようとしている。これらについての詳しい検討は、今後の課題である。
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