研究概要 |
韓国、台湾、日本における先祖祭祀の具体的様相を、骨と位牌という2つの象徴に注目して、それらの関連性の下に比較検討するのが本研究の課題である。12,13,14年度の調査によって、日本本土と韓国の事例研究にひとつの見通しを得たので、15年度には鹿児島県与論島にフィールドを移して日韓の研究者が合同で調査,検討会を行い、これまでの資料を踏まえた討論を行った。 与論島の調査においては、2003年に火葬場が新設されることに伴う、葬墓制の変化を調査したが、崖葬から、土葬、火葬に変わっていく全過程が記録でき、奄美大島の石材店が新築した納骨スペースを持つ和式墓地に納骨する儀礼も観察でき、遺骨に対する観念の把握に資すること大であった。数箇所に点在する共同墓地の現状も墓石、納骨器、配置のすべてにわたって記録し、近藤功行氏の記録との対照が可能となって、変化の相を具体的に把握できることになった。また、死に先立つ年祝い習俗も調べ、従来、民俗学で提起されてきた循環的生死観を再検討した。 韓国の調査では、ソウル近郊のムーダンを訪ね、先祖祭祀にかかわる都市化した儀礼を観察し、従来の理想的儀礼パターンとの対照を可能とした。規範から外れる事例を集積することによって、現実の先祖祭祀の様態を明らかにできるとの感触をつかんだ。 4年度にわたる調査研究をまとめるべく、報告書を作成した。
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