日本植民地時代の樺太(サハリン)への民族移動に関する文化人類学的研究を次のように実施した。 1 昨年度からの継続で、サハリンに戦前から移住した朝鮮の人々の聞き取りをおこなった。そこで、朝鮮系の人々の社会団体が、どのように韓国への永住帰国のための運動を展開したのか、また現在の活動状況について調査した。特に、戦前に樺太へ渡り炭鉱労働者をしていた方やその家族が、炭坑を経営していた日本企業に対して戦時賠償を求める動きが、アメリカの弁護士からの働きかけで活発化していた。サハリンでも、関係者からのアンケート調査を実施しており、そうした訴訟準備のための活動などを調査した。 2 昨年からの調査をまとめるため、2001年8月にサハリンで国際シンポジウムを企画し、我々だけでなく、サハリンに居住する朝鮮人の帰国運動を促進する組織に関係している人々、地元の東洋大学に在籍する研究者を交えて討論をした。 3 サハリンから韓国へ永住帰国した人々が多く住むソウル近郊の集合住宅、養老院を訪問して、戦前の日本統治時代の生活状況や韓国へ帰国するまでのプロセスを中心にインタビューをした。 4 サハリンの朝鮮系の人々だけでなく、敷香(ポロナイスク)とノグリキに在住していた、ウイルタとニヴフの先住民についての調査を実施した。 5 サハリンに戦後も残留していた日本人女性にインタビューをして、異民族との結婚の事例から、少数民族社会の形成、民族アイデンティティの問題について調査をした。
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