研究課題
2001年9月11日から9月21日に第一次福建調査を行った。小熊の他に研究分担者の参加は、波平・藩・何・謝であった。調査地は、厦門市及び龍海市、そして泉州市潯埔、福州市義序及び林埔の計5か所である。第二次福建調査は、3月1日から10日に行った。調査地は、泉州と福州である。参加者は小熊及び小川であった。調査項目の一つは、民間金融組織である標会についてである。実地調査の結果、文化大革命以前は、相互扶助的な性格が強かったが、1990年代には投機的な性格が強くなり、「倒会」といわれる破綻が相次ぎ、一種の杜会的危機の状況がみられた。現在は、多額の掛け金による標会は少なくなったが、まだ盛んに行われている。第二の調査項目は、宗族についてである。福建省の各地域において、近年宗族の復興が見られる。祠堂の改修や再建が行われ、そこでの位牌祭祀や族譜の編集などの宗族活動が盛んに行われている。その活動で注目されるのは、村落あるいは地域レベルの宗族を単位として、それぞれの同姓宗族の系譜関係を繋げるごとによって、同姓関係の拡大が見られる。また、福建省では、沖縄や台湾あるいは東南アジア華僑の「尋根」(祖先探し)をきっかけとして、福建省姓氏源流研究会が成立し、その下部組織として各姓ごとの委員会が組織されている。この組織は、海外からの祖先探し依頼者の受け入れと、省内の各姓ごとの連絡提携及び族譜編纂支援や祖先に関する資料作成・出版を行っている。従来の宗親会とはまた別の活動を展開しており、新たな宗族活動として注目できる。第三の調査項目は、花卉栽培である。福州市の建新鎮は、郊外型の花卉栽培が近年盛んに行われるようになった。また、羅源県鳳山鎮周辺では、大規模な菊栽培が展開されている。ここでは、北京や上海などの大都市への搬出が行われている。市民の花消費の拡大が、花卉生産の拡大に繋がっている。