研究課題
今年度は、特に武器・儀器としての石鉞、農具としての耘田器・破土器・石犂を中心に良渚文化石器の生産と流通の機構を解明することを目的とした。平成12年夏と13年冬の2回訪中し、計44日間を調査に費やした。日本からの参加人員は延べ12人に達する。具体的には、浙江省文物考古研究所、良渚文化博物館、余杭市博物館、海塩県博物館、桐郷市博物館、平湖市博物館に収蔵される良渚文化石器約700点につき実測、写真撮影、石材鑑定を実施した。また、杭州市、余杭市、海寧市、海塩県の計6ヶ所の採石場で石材を採取し、その鉱物学的特徴を明らかにし、出土石器原材との比較を行った。石鉞については、多数副葬例として知られる横山2号墓132点、匯観山4号墓48点、反山20号墓36点のすべてにつき綿密な調査を行った。いずれもこれまでに出土品のごく一部は報告されているが、全体像については不明であった。今回の調査により、石鉞の分類がほぼ確定し、各種ごとの使用石材、形態、着柄の有無、副葬位置などの対応関係を明らかにすることができた。この種の研究は中国においても従来行われていない。一方、農具類については、使用痕と着柄痕を詳細に観察することによって、これまでに議論の多かったその使用法についてかなりの確度で復元が可能となった。また、桐郷市博物館に収蔵される耘田器1点に線刻のあることを発見した。線刻が施された良渚文化石器はこれまでに例がなく、土器や玉器に施される文様との対比が可能となった。石材産地の踏査結果からは、多数副葬される石鉞の場合、その大多数は現地産の手近な材料を用いるが、丹念に研磨された例については遠隔地産の可能性が高いという見通しを得ることができた。特に、ホルンフェルス製のものについては海塩県六里近辺に石材産地が存在する可能性を指摘しうることとなった。
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