研究課題
今年度は、平成13年9月と14年2〜3月の2回にわたり訪中し、計40日間を調査・研究に費やした。農具類と玉器製作用工具類を中心に網羅的な資料収集を行い、観察・分析を進めた。具体的には、浙江省の浙江省文物考古研究所、海塩県博物館、平湖市博物館、嘉興市博物館、湖州市博物館、舟山市博物館、馬〓博物館、上海市の上海博物館、青浦県博物館に収蔵される良渚文化石器約600点につき実測、写真撮影、石材鑑定、使用痕観察を実施した。また、浙江省内5ヶ所で石材を採取し、その鉱物学的特徴を明らかにし、出土石器原材との比較を行った。農具類については、金属顕微鏡を使用しての詳細な使用痕観察を行った結果、これまで、中耕・除草用具と想定されていた「耘田器」が実は収穫具であることを明らかにしえた点は特筆すべき成果といえる。また、破土器と石犂についても、擦痕の分布範囲と方向を丹念に観察することで、着柄法と使用法についてのより明確な復元案が提出可能となった。さらに、桐郷新地里、上海広富林、同亭林の諸遺跡の墓葬内出土品を実見する機会を持ち、共伴土器から該当石器型式に確実な年代を与えうることになった点は編年研究上の大きな進展である。玉器製作用工具類については、未報告の玉器製作址である余杭市塘山遺跡出土品を中心に精査を進めた。同遺跡出土の擦切用石器、砥石、彫刻用打製石器等を調査することで、玉器表面の製作痕跡のみからする従来の製作技法復元の欠を補うことができた。石材産地については、これまでの調査から浙江省嘉興地区にホルンフェルス原材産地が存在するとの見通しを得ていた。海塩県と平湖市における石鉱踏査の結果、ホルンフェルスそのものの露頭は発見できなかったが、地質学的にはそれが存在する可能性が十分あることが判明した。
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