研究課題
本年度は国内有数の所蔵量をほこる東京国立博物館所蔵鏡群を中心に、自然科学・考古学の両面から青銅鏡の製作技術を検討した。まず、三次元レーザー計測装置を用いた鏡背面の精密計測を行い、同文様鏡(同笵・同型鏡)における微細な図像の違いと製作技法の違いを検討した。また、X線透過撮影や顕微鏡による観察結果から、青銅鏡の内部欠陥を把握した。さらに、この精密計測結果を基に、銅鏡の鏡背に残された鋳型の傷を肉眼観察した。また、観察結果をより客観視するために、大型カメラによる細部写真の撮影、顕微鏡写真の撮影を行った。さらに、これらの基礎資料をもとに、以下の研究を行った。(1)鋳造技術の検討(銅鏡の鏡背に残された鋳型の傷や内部欠陥から、鋳造方法を検討する。)(2)施文工具の検討(施文工具を中心に、銅鏡製作に用いられた工具を推測する。)(3)同文様鏡(同笵・同型鏡)における鋳造技術の比較検討(同一の鋳型で複数の銅鏡が製作されたか否か、また、その制作順序を検討する。)本研究の成果をもとに、特別巡回展『ヤマト王権と古墳の鏡』(横浜、茨城、岡崎にて開催)を行い、研究成果として「オーバーハング鏡がなげかける問題」(鈴木)、「三角縁神獣鏡の湯口」(今津)を発表した。海外資料の調査として、韓国西部地域(百済・馬韓地域)出土鏡の調査を行った。ただし、海外では、国内のような三次元レーザー計測やX線透過撮影や顕微鏡観察や精密計測は困難なので、実物観察や細部の写真撮影を中心に調査を実施した。
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