研究課題/領域番号 |
12571040
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安藤 和雄 京都大学, 東南アジア研究センター, 助教授 (20283658)
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研究分担者 |
神崎 守 京都大学, 大学院農学研究科, 助教授 (70183291)
竹田 晋也 京都大学, 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教授 (90212026)
岩田 明久 京都大学, 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教授 (20303878)
大成 浩一 京都大学, 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科, 助手 (10314254)
百瀬 邦泰 京都大学, 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科, 助手 (30303879)
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キーワード | バングラデシュのチッタゴン / ミャンマーのラカイン / 中国雲南省紅河のハニ / 南ラオス / 農業 / 水田漁労 / 在地の技術 / 定期市 |
研究概要 |
東南アジア、南アジア、東アジアなどの地域区分は、アジアを政治・経済的にブロック化しつつある。ブロック化により分断された、これらの周辺における地域像は、ブロック地域像の普遍化のために、その実像とかけ離れてしまっている。これが2年度目の調査で掴んだ問題意識である。これら東南アジア周辺に位置する狭間世界の地域像はブロックの普遍化された地域像を超え、連続的かつ異質的に変化している。2年度目には、中国、アッサムとの比較を視野にいれるために、チタゴン丘陵、ラカイン州の主要な調査地に南ラオスと雲南省紅河県を補足的であるが狭間地域の調査地に加えた。チッタゴン丘陵・ランガマテイ県ガグラ行政村のチャクマ族、ラカイン州・グア郡のラカイン族、紅河県甲寅郷のハニ族、ラオス・ケンコク郡のモン・クメール族の村々や郡庁や農林水産関係の普及局を訪れ、聞き取り、観察などの調査とともに統計などの基本資料を入手した。それらの中で特に注目された点は以下のとおりである。 (1)ラカイン州では、20世紀初頭まで、犂はベンガル犂であり、土を反転することができるビルマ犂はそれ以降に導入されたものであった。ベンガル犂は畑作に、ビルマ犂は水田作にと今でも用途を区別しても使用されている。 (2)ギャピと呼ばれる小魚やエビをペースト状にした食品(もしくは調味料)には、二つの種類があり、ラカイン州とチッタゴンをかたまりとする地域でのギャピと、イラワジデルタでのギャピが二つの分布域をみせていた。 (3)タウンヤ(焼畑)と水田は、村世帯の経済的な状況にもよるが、ラカイン族には水田、漁労嗜好が比較的はっきりとしていて、民族と生業の結びつきを予見させた。 ラカイン州という狭間世界では、食習慣や農業技術、生業が連続的に、混在しながら変化していることが確認できた。サバナケットでの市場調査では、生業などが民族性と個々の村の個性と結びついていたことが示された。今後は、民族性と村の個性の相互関連に焦点をあて、調査村落の点数を増やし、人々の生業と生活、村落社会の在り方、物と人とのネットワークがより具体的に現れる市場などに関するの調査を継続する。そして、村落がもっている地域の個性と在地性という二つの視点から、狭間世界の連続性と異質性について個々の村の事例を整理、分析することが必要とされる。
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