ペルー遠隔中学校におけるテレビの教育効果研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12571042
• 研究機関: 桐蔭横浜大学
• 研究代表者: 赤堀 正宜 桐蔭横浜大学, 工学部, 教授 (00167826)
• 研究分担者: アルベルト パラシオス 桐蔭横浜大学, 工学部, 助教授 (40267646) ; 宇佐美 昇三 駒沢女子大学, 人文学部, 教授 (00184995) ; 久保田 賢一 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80268325) ; 角替 弘規 桐蔭横浜大学, 工学部, 講師 (10298292)
• キーワード: 遠隔中学校 / テレビ中学校(テレセクンダリア) / マルチメディア教育 / 学習到達度調査 / 地域差と性差 / 心理学的分析 / 映像読解能力 / チユータ

研究概要

本研究は1999年、JICA専門家としてペルー共和国におけるテレビを主教育メデイアとする遠隔手法による中学校教育の普及を目的とした実験プロジェクトの援助のために赤堀正宜が派遣されたことに始まる。当時ペルーの中学校就学率は56%で特にアンデス山岳地帯、アマゾンジャングル地帯で低い数字を示していた。ペルー教育省は中学校教育の普及のためにメキシコで成功したテレビ中学校(テレセクンダリア)をモデルとしてテレビを主教材とするマルチメデイア教育システムの遠隔中学校を実験的にたちあげることとした。この実験校は2000年4月より101校で開始された。当時フジモリ政権下にあったペルーへ日本政府は資金援助を行い、この成果を検証する目的をもってもって2000年6月に本研究が開始された。しかし、2000年7月にフジモリ政権が崩壊し遠隔中学校プロジェクトそのもの進行が停滞し、また研究に対するペルー教育省の態度も良好とは言えなくなった。こうした状況の変化の中で、ペルー教育省との共同研究という協定を改めて結んで研究を再スタートさせることができた。
1.初年度の2000年度における調査は、主として遠隔中学校の教育を担当しているテユータに対するアンケート調査であり、この調査をとおして遠隔中学校の社会的、文化的背景を明らかにするとともに、ペルー中等教育における位置づけを明らかにしようとするものであった。結果は、遠隔中学校の教育環境は一般中学校と遜色のないこと、地域社会および父母によって歓迎されていることが明らかとなった。
2.本年度の調査は研究の2年目として本研究の中核を成すものである。従って慎重に準備を進め日本で調査票を作成して調査地へ臨んだ。この調査はペルー教育省との共同研究という建前から教育省の遠隔中学校担当の専門官2人、マルコブリオネス(Marco A.Briones数学担当)、マルガレタレオン<Margarita Leon TV教材制作担当>にも参加してもらい、8月13日(月)-8月31(金)にわたって実施した。調査地域はペルー北部のピウラ県の海岸と山岳にある2校であった。
研究方法は3教科について学習到達度の学習前、学習後のテスト、映像読みとり能力の測定テストを行い、心理学的分析によって結果を得る方法によった。結果は、成績上位群と成績下位群の生徒にテレビの効果が顕著であることが明らかになった。この結果は海岸と山岳という遠隔中学校のおかれている地域の影響の差は見られなかった。また性差も学習到達度に影響していないことがわかった。
さらに映像読解能力調査を都会にある一般中学校生徒と比較して実施した。結果は学習にテレビを利用している遠隔中学生は番組の主題の読みとりにおいて日頃家庭でテレビを見慣れている一般中学校の生徒より優れていることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] 赤堀正宜, 久保田賢一, 宇佐美昇三, アルベルト・パラシオス, 角替弘規: "ペルー遠隔中学校におけるテレビ教材の効果調査"教育メディア研究. 8巻2号. 45-77 (2002)
• [文献書誌] 久保田 賢一: "事例研究:ペルーにおける遠隔中学プロジェクト"第12回国際学開発学会全国大会報告論文集. 422-427 (2001)
• [文献書誌] 赤堀正宜, 久保田賢一, 宇佐美昇三, アルベルト・パラシオス, 角替弘規: "データ調査に見るペルー遠隔中学校"第8回日本教育メディア学会 大会発表論文集. 32-33 (2001)
• [文献書誌] 赤堀正宜, 久保田賢一, 宇佐美昇三, アルベルト・パラシオス, 角替弘規: "ペルー遠隔中学校におけるビデオの教育効果測定デザイン"第8回日本教育メディア学会 大会発表論文集. 34-35 (2001)
• [文献書誌] 赤堀正宜, 久保田賢一, 宇佐美昇三, アルベルト・パラシオス, 角替弘規: "ペルー遠隔中学校をとりまく教育環境とその問題点"第8回日本教育メデイア学会 大会発表論文集. 36-37 (2001)