研究概要 |
三年計画の最終年度にあたる本年度は、予定どおり、ふたつのことを行った。ひとつは、昨年度のテロの影響によってやり残した外国出張を行い、アジア現地における映像データ収集を遂行し完了したこと。もうひとつは、これまで日本・中国・韓国の三文化圏において収集してきた映像データを、コンピュータによって画像処理し、映像解析を行ったこと。 今年度の映像データ収集・調査の外国出張は、昨年度(平成13年度)にやり残した分が主なので、最初の2年間の平均(年12〜15回)より少なく、年間をつうじて4回となった。 今年度の主力は、収集した映像を分析することに置かれた。さらに、映像解析から得られた映像の規則性(文法)を理論化して、三つの文化圏の映像文法を検出する作業を現在、進めつつある。映像文法の比較のしかたはいくつかあるが、本研究において試みたのは、つぎの2つである。一つ目は、映像文法の基本的な諸項目をあらかじめ設定しておいて、それらの項目が撮影・編集のプロセスにおいてどのように働いているかを調べること。二つ目は、具体的なテーマ(たとえば「家族」とか「食べもの」といったテーマ)を設定し、それらのテーマが三つの文化圏の映像においてどのように異なった表現を与えられるかを分析すること。 こうした三文化圏における映像文法の比較研究は、当初から意図したものであったが、はじめは予想していなかった思いがけない副産物が得られた。それは、日本・中国本土・香港特別区・台湾・韓国において収集した映像データの膨大な山である。DVテープで約1,000本という映像データが、手元に残った。本研究の終了後は、これからのデータ保存について専門家たちのアドバイスを得ながら、広く研究に資するようにデータベース作成を行おうと考えている。
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