本研究の目的は、三つあった。一つ目は、日本の隣国にありながら、政治的、歴史的事情によって文化的産物の輸出入がコントロールされてきた中国(香港特別区、台湾を含む)と韓国に出かけ、そこで「なまの」映像データを収集すること。二つ目は、そのデータのなかに見られる規則性(つまり文法)を解明すること。三つ目は、それらを日本の映像文法と比較することによって、アジア間における三つの文化の映像文法の差異を解明すること。 これらの三つの研究目的は、予定どおり、遂行することができた。日本の映像文法とは異なる空間認識に基づいた映像文法が、中国と韓国の映像に見られた。三つの文化圏における映像文法の比較を行うことができたことは、大きな収穫であり、おなじアジアであっても日・中・韓では空間認識が異なり、そのため映像文法も異なってくることが明らかになった。最終的な考察は、現在、論文にまとめつつあるが、それ以前の考察は、後記の4つの論文にまとめられた。 また、手元に残った膨大な映像データは、3年の歳月をかけて総計28回にわたって現地で収集したものであり、通常の手段では入手が困難なものである。これらは現在、DVテープの形で保存されており、中国文化圏のデータの一部はPALシステムからNTSCシステムに変換済みになっている。これらのデータは、近いうちにCDに焼いたうえで、データベースとして有効に活用できるように整備するつもりである。
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