東北タイの地域発展と市民社会形成

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12572001
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 櫻井 義秀 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50196135)
• 研究分担者: 鈴木 規之 琉球大学, 法文学部, 教授 (60253936)
• キーワード: 東北タイ / 地域発展 / 市民社会論 / 開発僧 / NGO / NPO / 農村社会 / 開発主義 / 日本語教育

研究概要

本年度は研究最終年度であり、分担研究者、研究協力者が補足的調査を行うと同時に、国内外の学会等で研究発表を行った。
そして、研究代表者が所属する北海道大学で、平成15年2月4-5日に国際シンポジウムRegional Development of Northeast Thailand and Formation of Thai Civil Societyを開催し、3年間の研究を総括すると共に、各研究者の報告を英文・タイ語の報告書として提出してもらった。科研の研究報告書はここで発表された分担研究者、研究協力者の発表を、会議中の議論をふまえて、修正、加筆したものである。研究成果については、多岐に渡る。
第一に、タイにおける市民社会論をタイ語文献においてレビューを試みたことと、タイのNGO/NPO論における中間集団による市民社会形成の議論を事例分析に即してまとめたことである。
第二に、近年の情報機器、インターネットを利用して地域情報をグローバルに発信しようというするタクシン政権の情報制作の中で、地域社会がどのように潜在能力を高められるのかという課題を実証的に村落調査や大学の情報化の事例から分析できた。また、タイの地域社会の動向として、住民組織の基礎的活力を利用した地域形成も可能性のある領域であることをタイの研究者が示した。
第三に、タイに日本人旅行者やNPO活動家が自分探しの旅に出かけ、タイの文化伝統や地域社会の中で癒しを得ている事例が報告された。
これらのレビュー、事例報告ともに、本邦初の調査研究であり、成果は大きいと確信する。

研究成果

• [文献書誌] Sakurai Yoshihide: "The Tasks of NGOs in Rural Development in Northeastern Thailand : the Debate on the Formation of Civil Society"北海道大学文学研究科紀要. 107. 73-112 (2002)
• [文献書誌] 浦崎雅代: "多様化する開発僧の行方-HIV/エイズ・ケアに関わる開発僧の出現を事例として"宗教と社会. 8. 79-92 (2002)
• [文献書誌] Masayo Urasaki: "The Role of the Development Monk in Thailand : From the view of Their Interaction with Laypersons"setakit popiaeng lae phrachaa sangkhom ; phol jaak kan saewanaa sahasakhaa vichaakan rawang sataabanhageng chaat kran tii 1. 1. 14-17 (2002)
• [文献書誌] 佐藤康行: "市民社会論を俯瞰する"『グローバリゼーションに関する学際的研究』新潟大学大学院現代社会研究科. 2. 1-11 (2002)
• [文献書誌] 鈴木規之: "沖縄の国際化とアジア-サステイナブルな関係の構築に向けて-(2)"『人間科学』琉球大学法文学部人間科学科紀要. 11. (2003)
• [文献書誌] 泉経武: "村落仏教と開発の担い手の形成過程-タイ東北地方「開発僧」の事例研究-"東京外大東南アジア学. 7. (2002)
• [文献書誌] 泉経武: "「開発」の中の仏教僧侶と社会活動-タイ・スリン県の「開発僧」ナーン比丘の事例"宗教学論集. 第21輯. (2003)
• [文献書誌] 泉経武: "村落の僧侶が「開発僧」になるまで-タイの9開発僧」を事例に-"SOTO禅インターナショナル. 20. (2002)
• [文献書誌] 鈴木規之: "「タイと沖縄-グローバル化の中でのサステイナブルな関係の構築のために-」『琉球・アジアの民族と文化』(比嘉政夫教授退官記念論集)"榕樹書林. 493-519 (2002)