本年度は4年間の研究期間の2年度目にあたり、初年度の研究結果を更に発展させるとともに、新たな論点についての取組みを開始した。 1.証券振替決済法制についての各国調査及び研究成果の公表 前年度に引き続き、証券振替決済法制についての各国調査(英国及びドイツ)を進め、このうち英国実質法の状況についてはその成果を公表した(論文目録記載のもの)。英国抵触法及びドイツの状況、及びそれらの各国調査を踏まえた日本法制のあり方についても近日中に成果が公表される予定である(各国とも近時の動きが激しく、極力最新の動向を反映するために予定より公表時期が遅れた)。 2.国際金融取引における信託法理の機能についての英米の状況の調査 前年度は主として取引相手方が倒産した場合の権利者の保護という観点から信託法理の機能について調査を行ったが、本年度はいわゆる信認義務を含め、より広い視点から国際金融取引における信託法理の機能について、英米の状況についての研究を行った。英米の判例を分析するほか、3月にニューヨーク、ロンドンにおいて現地の実務家にインタビューを行った。次年度前半に一応の研究成果を公表したいと考えている。 3.銀行監督・破綻処理についての英米の状況の調査 今年度より新たに銀行監督・破綻処理についての検討を開始した。英米の文献を調査するほか、3月にはワシントンにおいて米国の当局担当者等に意見聴取を行った。次年度以降も継続して研究を行う。なお、国際的な銀行倒産という観点からは、前年度の国際私法学会で行った報告を基礎に、新たな国際倒産法制のもとでの国際銀行倒産処理についての論文を公表した。 4.金銭の法的地位についての研究 国際金融取引の対象である金銭の法的地位に関連し、前年度に私法学会で行った個別報告を基礎に加筆修正した論文を公表した。次年度には前記2との関係も含め、より発展させた研究成果を公表する予定。
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