研究活動は第1年度ということもあって、基礎的なデータの収集、基本的な理論フレームワークの形成のための研究活動が主たるものであった。まず前者については、2つの研究作業が重要であった。1つは米国、中国、台湾に居住もしくは留学している大学院生とコンタクトを取り、それぞれの地域における主な雑誌、新聞などでの対米国、対中国、対台湾のそれぞれのイメージ、認識に関する世論調査や関連の論文の収集を依頼し、作業を進めてもらったことである。2つには日本にいる若手研究者、大学院生に、米・中・台湾の主な新聞(例えば、ニューヨークタイムス、ワシントンポスト、人民日報、中国時報など)の90年代における関連記事のピックアップ、整理作業を進めてもらった。後者の理論フレームワークの形成作業に関しても、主に2つの研究作業が重要であった。1つは中国、米国、台湾へ直接赴き、当地の関連した研究者、外交担当スタッフ、政治家などと直接会い、インタビューをすることによって、それぞれの基本的なものの考え方についての情報を得たことである。2つには上記前者の2番目で指摘した若手研究者、大学院生との間で、2ヵ月に1度の定例研究会を開き、彼らの収集した資料、データ-の報告を受けながら、実際的な状況の中から米・中・台湾をめぐる理論的なフレームワークを構築しようとしたことである。現在の段階では、李登輝前台湾総統やケネス・リーバーソル前米国国家安全保障会議アジア部長などとのインタビューを通して、フォーマルなチャネルから浮かび上がってくる米・中・台湾の関係と同時に、インフォーマルなチャネルによる交渉の流れをつかむことがきわめて重要であるとの認識に達している。日本そのもののアプローチ、イメージに関しての作業は十分ではなかったが、次年度につなげる有意義な研究活動ができたことに感謝したい。
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