本研究プロジェクトは、1990年代の米中関係、日中関係、日米関係における幾つかの重大イシューをめぐり、関係者とのインタビュー、資料発掘を通して新たな事実関係を浮かび上がらせ、その上でそれぞれを相互に連関させ総合的かつ動態的なトライアングルを浮かび上がらせることを目的としている。本年度は、「米国同時多発テロ」の影響によって米国での取材・調査ができなくなり、この点では予定の変更を余儀なくされた。しかし12月に別件で来日した元米国国務省次官補代理のスーザン・シャーク教授に会うことができ、ある程度の成果を上げることができた。本年度は中国へは3度(2度は本プロジェクト外のシンポ・調査参加)、台湾、香港へは各1度(これらも国際シンポへの参加)訪問したが、その機会を利用して本プロジェクト関連の調査・取材をも実施することもでき収穫は大きかった。中国では日中、米中、中台について関連の専門家、ブレーンたちと意見交換でき、特に若い世代の対日・米観、戦略論に触れることができた。香港では中国・ASEANラウンドテーブルに参加し、東南アジアの研究者・実務家が日米中のトライアングルを如何に見ているのかを知ることができ、かつ中文大学、香港大学の専門家とも意見交換できた。また台湾では「台湾の民主化と国際関係」のシンポジウムに参加した。ここでは20名余りの外国人ゲストと意見交換すると共に、陳水扁総統の対中国政策などを聞くことができた。2000年以降、台湾での民進党政権の誕生、ブッシュ政権の登場、中国プレゼンスの増大、日本プレゼンスの低下など日米中関係構造のファクターの変化が目立ってきている。そうした変化の全体像を客観的に見通すためにも90年代の把握はきわめて重要である。本年度は、現状認識、日米中関係構図の捉え方などについての意見交換が多かつた。最終年度件改めて90年代初頭から現在までのダイナミックな構造を捉えなおす作業を行ってみたい。
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