本プロジェクトは今年度で最終年であった。本年度の主たる目的は以下の2点であった。第1点は、過去2年間のインタビュー、資料収集、資料検討なとを集約しながら、米中日のトライアングルの新構造を浮かび上がらせることであった。第1年度は、現地訪問によるテーマに関連資料の収集、関係者へのインタビュー作業のほかに若手研究者、大学院生を研究協力者として研究会を組織し、1990年代における中国、米国、台湾の主な新聞に現れた米国、中国イメージを明らかにしていった。第2年度は主に中国、台湾のブレーンたちへのインタビュー、意見交換によって対日本、対米国の認識や戦略を考察することができた。最終年度はできれば、2001年9月の「米国同時多発テロ事件」によって米国での関係者へのインタビューや資料収集がかなり不足したために、米国に重点を置いた学術調査を進めていくということ、そして、90年代の中国の対米国、対日本への認識、戦略、さらに日本自身の対米国、対中国への認識と戦略も同時にカバーしていく予定であった。しかしこの点では、Ramon H.Myers (Professor of Stanford Univ.)、Harry Harding、Mike.M.Mochizuki (Professor of George Washington Univ.)らとの意見交換ができた以外は、卒直に言って当初予定した訪米によるインタビューの成果があげられなかった(ただし、今年度末の3月に訪米しある程度カバーする予定)。他方で日中関係(台湾問題も含む)については、国交正常化30周年ということもあり、6回の訪中機会をもち、多くの学者・日中関係者と意見交換をすることができ、予想以上の成果があった。第2点は、できるなら直ちに本プロジェクト研究に関連した論文を執筆し、研究成果を出すことであった。この点に関しては、11に示したように、3本の関連論文を執筆することができ、そのうち日中関係に関する論文は、すでに英語への翻訳作業が進んでおり、国際的な学界への日本人研究者としてのアピールを試みている。日米関係についての資料収集、及び研究成果についていささか不十分性が残り、今後の研究課題としたいが、総じて今年度目標とした点についてのほぼ満足のいく成果が得られたといえよう。
|