グローバリゼーションの急スピードで進展する中で、EU、アメリカ、アジアが世界の3極間の関係が、地域統合の関連でも注目されるようになった。アメリカとアジアはAPECを舞台に、そしてEUとアジアはASEMを舞台にその協力のフレームワークが議論され、それとは独立に数々のFTAの話が持ち上がった。こうしたことを背景にこの研究ではアジアと日米欧の経済・文化・政治リンクを解明しようと試みた。「日米欧の影をタイ経済にみる」というテーマで2000年を中心としたタイ経済をタクシン政権の新経済政策を批判的に検討することから分析し、いま少し長期的観点から1960年代からのタイ経済をレビューした。「グローバリゼーションと国民経済」というテーマではタイにおける危機からの回復過程におけるタイ文化の強靭さを紹介するとともに、グローバル化の経済に及ぼす影響を開発戦略という観点から分析した。「日米欧とアジアの相互依存と中国の台頭」についてはマクロ依存関係を経済統計で確認し、中国の台頭についてはその他アジアにとってどれほどの脅威があるかを数値であきらかにした。中国の脆弱性をみることで、その他アジアも産業の高度化をはかり協調体制を組むならばどちらかというと中国の台頭はビジネスチャンスと捉えるほうがよいことをしめした。「グローバリゼーションと金融」ではアジア危機とはなんであったのかを探り、その反省からあらたなる金融システムの構築に関しても言及する。最後のテーマ「人口・高齢化・生産性」においてはグローバリゼーションがもたらした人口に関する影響、日本のみならず東アジアに今後訪れる高齢化の問題、そして更なる経済発展に肝要な生産性についての研究を総合的に展開した。
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