当研究は2つの研究テーマを結合している。1つは、35時間労働法によって引き起されたフランスの自動車産業における労働慣行の変化(ワークシェアリングと労働時間のフレキシブル化)の実態を調査研究することであり、もう1つは、このような労働環境のもとで、2001年に操業を開始したプランス・トヨタによるトヨタ生産システムの適用実態を追跡調査することである。2003年度の研究実績は以下の通りである。 (1)フランス自動車メーカーにおける35時間労働の実態調査 2000年度にフランスの35時間労働法の立案に参画したD.タデイ教授とG.セット教授に対する聞き取り調査を終了し、2001-2003年度にかけてルノー、プジョーSAおよびプジョー・フィアットの合弁会社スベル・ノールに対して35時間労働実施のための企業内労使間協定および工場内労使間協定の聞き取り調査と資料収集を行い、また他産業の労使間協定に関する資料収集も行った。2003年度にはフランス・トヨタにおける35時間労働実施に関する労使間協定に関する聞き取り調査を行い、フランスにおける自動車メーカーの35時間労働に関する労使協定を収集し終わった。 (2)トヨタ・フランスの研究 2000年度にはパロンシエンヌ市長、同市商工会議所に対してトヨタの誘致政策について聞き取り調査を行い、また2001年には金属産業組合に対してフランス・トヨタを取り巻く産業環境について聞き取り調査を行った。2000年6月、2001年6月、2002年6月の企業訪問および工場見学に続いて、2003年6月にはプレス工程から最終組立工程まで見学を行い、組立工程のコンセプトについて説明を受けた。また、11月にはトヨタ・フランスの人的資源管理および35時間労働の実施に関する労使間協定についての説明を受け、研究計画として当初に設定した研究目的を達成することができた。 (3)研究成果の発表 ルノーとプジョーにおける35時間労働の実施方法に関しては進化経済学会の部会(2001年9月)および大会(2003年3月)において口頭発表した。また、D.タデイ教授への聞き取り調査に基づいた論文「フランス35時間労働法の性格と意義」を執筆し、2003年3月に発表した。現在は収集した資料を整理検討して成果発表の準備を行っているところである。
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