今年度は、前年度までに行った文献研究によるモデル構築並びにパイロットサーベイに基づいて導出したグローバルコンピテンシー尺度の精緻化、本調査に向けた調査項目の策定、および本調査を実施した。また、中間報告を兼ねて、本調査の最終分析モデルの構築に向けた実務家からのフィードバックを得るとともに、本調査への協力企業を開拓するために海外共同研究者を招聘し、国際フォーラムを開催した。本年度の研究成果として、以下のような新たな知見および適用が発見された。まず、パイロットサーベイによる実証研究および、国内外のインタビュー調査により、分析モデルおよび作業仮説が検証されるとともに、コンピテンシー尺度の精度緻化が図られた。本尺度は先行研究のメタ分析を実証的に確認、改定した意味で本研究テーマの深化に貢献したといえる。次に、調査結果の地域間比較を通して、本研究が想定したコンピテンシーの地域的差異が確認され、環境条件との相互作用の重要性が確認された。これにより、本研究が問題提起した新たな研究視座を客観的に提示するという貢献を果たした。さらに、この調査結果を国際フォーラムにおいて発表し、本モデルおよび尺度の有効性および適用に向けた課題について実務家との意見交換を行い、研究成果の社会還元の方向性について示唆を得られた意義が挙げられる。以上のような研究成果は、研究課題を着実に達成しており、最終年度における総括的なまとめにつながる重要な実績といえる。なお、最後に今年度の特筆すべき成果として、本研究が2003年5月に米国・サンディエゴで開催されるAmerican Society for Training & Development(米国人材開発協会)での発表が決定したことが挙げられる。同協会は1966年に設立された世界で最大規模の人材開発協会(法人会員2万社、個人会員数7万5千名)であり、日本からはこれまでに数件しか発表者が出ておらず、本研究成果に対して国際的な関心が寄せられていることを示すといえる。
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