本調査で、南サハリンにおける日本統治期の建造物のうち、252棟と4灯台の現存を把握することができ、80件の現存建造物に関するデータベースを作成した。調査地別では、Dolinsk(旧落合)43、Makarov(旧知取)13、Poronaysk(旧敷香)15、Chekhov(旧野田)19、Tomari(旧泊居)22、Uglegorsk(旧恵須取)26、また補足調査地ではYuzhno-Sakhalinsk(旧豊原)13、Korsakov(旧大泊)10、Kholmsk(旧真岡)29棟の現存を新たに確認できた。このほかSokol(旧大谷)で15棟の旧日本軍官舎群が、Leonidovo(旧上敷香)で約30棟の旧第25連隊官舎軍が遺存していた。現存が確認された建造物の内、旧製紙工場関連の建造物は174棟に上り、総件数の2/3を占める。社宅は、旧知取工場以外の8工場で現存が確認された。特に、旧落合工場と旧真岡工場では社宅群として現存し、旧恵須取ではRC造アパート6棟の現存が確認された。また現存する日本期の灯台施設7灯台のうち、Lopatina(旧気主岬)灯台、Svobodny(旧愛郎岬)灯台、Slepikovsky(旧小能登呂岬)灯台、Lamanon(旧知来岬)灯台の4灯台がいずれも現役灯台として稼働している。このほかBykov(旧内淵)では炭鉱関連施設、Krasnogorsk(旧珍内)では発電所の遺存が、さらに旧学校地内の奉安殿7棟や旧神社の社殿基礎や鳥居などの遺存も確認された。また旧樺太中央試験所の実測調査では14枚、旧北海道拓殖銀行大泊支店の調査では8枚の実測図を作成し、いずれも日本期を代表する貴重な歴史的建造物の一つであることを再確認することができた。
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