本年度は日中比較を通じて、電力産業を中心に研究を行った。以下のことが分かった。 電源構成においては、石炭火力中心の中国と原子力依存度の高い日本は対照的で、新エネルギーの利用促進は日中共通の課題である。発電量は日中がほぼ同じであるが、発電用化石エネルギー投入量は中国が日本の2.2倍となっている。その原因は電源構成の違いに加え、発電から送配電までの過程で、エネルギー利用効率は中国が日本よりもはるかに低いことである。火力発電の発電端熱転換効率(1997年)は中国が32.1%、日本の39.7%より約8ポイント低い。平均所内消費率(1997年)は中国が6.8%、日本の4.4%より2.4ポイント低い。送配電損失率(1997年)は中国が7.5%、日本の5.5%より2ポイント低い。総合損失率は中国が13.8%、日本の9.6%より4.4ポイントも低くなっている。その結果、電力産業に起因するSO2発生量は中国が日本の4.8倍、CO2排出量は中国が日本の2.7倍となっている。中国の電力産業における省エネルギーとSO2、CO2など汚染物質排出量削減の潜在力が大きい。 中国が高効率(発電端効率37%)の大型石炭火力(30kW)を中心とする電源開発計画を持っている。それを用いて、10万kW以下の低効率石炭火力を代替し、省エネルギーと汚染物質削減を図る狙いである。しかし、もし石炭火力ではなく、発電効率が50%のガス複合火力を導入する場合、省エネルギー効果と汚染物質排出量削減効果がさらに大きい。本研究では、CO2の削減コストは最大でも60ドル/T-Cと計算される。日本が公約した削減目標を実現するには、削減コストが300ドル/T-Cに達すると言われているので、中国のそれが日本の1/5以下と推定される。CDMを適用するメリットが極めて大きい。
|