研究概要 |
超高エネルギー宇宙線起源の解明は、宇宙線物理学研究上の最大の課題である。この宇宙線起源同定を困難にしている原因は、宇宙線の大部分が原子核であり、銀河磁場によって宇宙線はその進行方向を変えられ、到来方向がそのまま源の方向とは関連を持たないことが挙げられる。結果として宇宙線の到来方向分布は非常に等方的である。一方、仮に宇宙線到来方向分布に異方性が検出されるならば、その原因としては、太陽系のごく近傍(数100pc以内)に宇宙線源がある可能性が考えられる。よって、宇宙線異方性の研究は、宇宙線の起源を解明する上でも極めて重要である。 そこで,本研究目的は、南米ボリビア・チャカルタヤ山宇宙線研究所にある既存の空気シャワーアレイに、一部装置を増設し、宇宙線エネルギースペクトラム、化学組成と到来方向の関連を明確にし、Vela超新星残骸(SNR)が高エネルギー宇宙線の発生源であることを確立することにある。 平成12年度は、観測装置の設置、および、予備データの収集を行った。本観測は、平成13年度より開始し、平成14年度はさらに観測を継続した。これにより、予定通りのデータ蓄積を達成できた。 最終結果は、まだ得られていないが、宇宙線到来方向分布が銀河面と正の相関を持つこと,また,銀系領域220度から260度にかけて銀画面から、約0.3%の宇宙線の過剰が観測できた。一方、シミュレーション計算結果によれば、Vela SNRの年齢が10万年であるか、太陽系からの距離が250pcであれば、観測結果が説明できることがわかった。これに対する現在の値は、それぞれ1万年、500pcであるが、ROSATの観測結果により、10万年前に一度爆発があったこと、また、距離も250pcであるとの報告が出されている。いずれにしても、宇宙線過剰度のエネルギー依存性を解明することがきわめて重要であることがわかった。
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