古テチスにおける前期古生代地圏変動と生命圏進化の相互作用

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12573008
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 松本 良 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40011762)
• 研究分担者: 狩野 彰宏 広島大学, 理学部, 助手 (60231263) ; 田沢 純一 新潟大学, 理学部, 教授 (50108453) ; 角和 善隆 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (70124667) ; 王 偉 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員 ; 相沢 省一 群馬大学, 工学部, 助教授 (20008527)
• キーワード: オルドビス / シルル系境界 / 氷期 / ガスハイドレート / 希土類元素 / 炭素同位体組成

研究概要

1,中国南部、長江流域の宜昌および南京周辺の古生代の地層中にオルドビス系とシルル系の境界を確認し、境界付近の詳細な調査を行った。特に、宜昌付近ではこれまでに報告されていたタイプセクションのそばの河川中に、地層の保存状態が遙かに良く、風化の影響が最小のセクションを発見した。オルドビス紀・シルル紀の境界ではブラキオポーダ、グラプトライトが大規模に絶滅している。その原因を明らかにするため、高密度のサンプリングを行い、堆積学情報と地球化学情報の収集に努めた。地球化学分析項目は、有機炭素と無機炭素の同位体組成、全炭素量、全硫黄量、希土類元素含有量、モリブデン、ヒ素、ウラン、トリウム含有量である。堆積データを比較することにより、オルドビス紀・シルル紀変動として、次の時系列変動を提唱する。1)氷床の発達により海洋が全般的に酸化傾向となる、2)海水準の低下により、海洋のガスハイドレートが分解し、大気海洋系にメタンが放出される、3)海洋の貧酸素化が急速に進行、4)還元的な海洋が発達し還元的な兀素が沈殿、5)メタンに由来する軽い炭素が海洋の炭素同位体組成を急激に軽くする、6)還元的な海洋でグラプトライトの絶滅、7)メタンと二酸化炭素による温暖化の促進で氷床の溶解、氷期の終焉。
2,中国東北部でのシルル系〜ペルム系の調査。腕足類、紡錘虫類の採取。吉林省東部に分布するペルム系が日本の南部北上と非常に似ていることが判明。また吉林省中部のペルム系から採取した紡錘虫Monodiexodinaは、古生物地理学的に重要であることが分かった。

研究成果

• [文献書誌] Tazawa, J.: "Middle Permian brachiopod faunas of Japan and South Primorye, Far East Russia : their palaeobiogeographic and tectonic implications"Geosciences Journal. Vol.5, no.1. 19-26 (2001)
• [文献書誌] Tazawa, J.: "Middle Permian brachiopods from the Moribu area, Hida Gaien Belt, central Japan"Paleontological Research. Vol.5, no.4. 283-310 (2001)
• [文献書誌] Schenk, P.E., von Bitter, P.H., Matsumoto, R.: "Carbonate mud flows and other indicators of exdess pore-fluid pressure in the Macumber Formation (Lower Carbonifersous, Visean) at Ingonish, Nova Scotia, Canada"Carbonoates ando Evaporites. Vol.16, No.2. 185-209 (2001)
• [文献書誌] Kano, A., Machiyama, H., Matsumoto, R.: "Facies and depositional environment of Middle to Upper Cambrian sponge mounds of northern Iran"Bull.Tohoku University Museum. No.1. 125-133 (2001)
• [文献書誌] 角和 善隆, 夏 文臣: "南中国古生代後期の生物大量絶滅事件と含放散虫珪質岩の研究"古生物学トピックス. No.2. 53-64 (2001)
• [文献書誌] Shen, Ji, Matsumoto, R., Wang, Sumin, Zhu, Yushing: "Quantitative reconstruction of the paleosalinity of the Daihai Lake, lnnter Mongolia, China"Chinese Science Bulletin. Vol.46 No.1. 227-234 (2001)