研究課題
基盤研究(B)
本研究は、マントルかんらん岩の年代測定と岩石学的研究から、大陸下マントルの形成過程を明らかにすることであった。年代測定として、パイロクシナイト岩に含まれていると考えられるジルコンのUIPb年代の決定を試みるとした。またキンバーライト捕獲岩として得られるマントルかんらん岩中にはしばしばマントル深部でのみ安定な鉱物が含まれることが知られている。それらマントル鉱物の安定な温度・圧力・バルク化学組成を明らかにする目的で、超高圧高温実験も行った。初年度はスペインのロンダかんらん岩体にて4週間におよぶ地質調査を行った。約500個の岩石試料を採取するとともに、現地にてかんらん岩体中に脈状に存在しているパイロクシナイト岩の産状にっき詳しく調査した。次年度にはボツワナおよび南アフリカのキンバーライト起源のダイヤモンド鉱山を訪れ、マントルノジュールの採集を行った。ボツワナは世界最大のダイヤモンド産出国として名高いものの、鉱山への立ち入りは研究者も含めこれまで厳しく制限されていた。今回は現地の日本大使館からの紹介をいただき、ボツワナ政府・デビアスの合弁会社社長の特別のはからいにより、鉱山内部の立ち入りおよびノジュールの採集を許可していただいた。ボツワナで現在稼働中の3つすべての鉱山を訪れることができた。ジルコンを用いた年代測定は南アフリカのプレトリア周辺の鉱山から得られたものを用いて行った。測定は広島大学の佐野研究室のSHRIMPを用いて行った結果、12のサンプルにつき、UIPb年代を得ることができた。約77Maという年代はキンバーライトの噴火年代を示すと考えられる。今回は残念ながら、他の鉱山のサンプルから報告されているより古い年代を得ることはできなかった。ボツワナのオラパ鉱山から得られたかんらん岩につき、その組織観察とマイクロプローブを用いた鉱物の化学組成分析を行った。その結果、一部にアセノスフェア起源と考えられる変形組織が発達した岩石があることがわかった。また地質温度圧力計を用いて、大陸下のマントルの地温勾配を決定することができた。超高圧実験はマントルの主要な化学組成と考えられるパイロライト的かんらん岩と玄武岩組成に関して行い、それぞれのバルク組成で安定な鉱物の出現関係や化学組成を27GPaまでの圧力にて決定することができた。
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