研究概要 |
来年度に実施予定の本調査へむけての基礎情報の収集を目的に,本年11月から12月にかけてトンレサップ湖北部一帯での湖底柱状堆積物および表層堆積物,ならびに同周辺の沖積低地堆積物の採集を行った.これらの試料の予察的な解析の結果,これまでに以下の事実が判明した. トンレサップ湖北部の10観測点から採取した12本の柱状試料すべての表層部には,きわめて軟弱な赤褐〜黄褐色を呈する砂質泥層が位置し,この層には淡水性二枚貝を主体とする貝殻や貝殻片および植物遺骸が多量に含まれる.その直下には青灰〜暗褐色を呈する比較的緻密な泥層,あるいは灰緑色あるいは淡橙色の半固結砂質粘土層がある.青灰〜暗灰色泥層には炭化植物破片の密集層や軽微な生物擾乱の痕跡が認められる.一方,淡橙色砂質粘土層には植物遺骸が含まれることが多く,本層の直上には植物遺骸に富む濃褐色の粘土質砂層あるいは赤褐色のノジュールが発見されることがある.また,一部の柱状試料には青灰〜暗灰色泥層直下に淡橙色砂質粘土層が位置することが確認される.なお,これらの柱状試料に含まれる花粉・珪藻群集組成,堆積物の放射性炭素年代値,ならびに砂質堆積物・粘土鉱物の組成について,現在それぞれの解析を進めているところである. トンレサップ湖北部一帯ならびに調査実施時には水底となっていた周辺沖積低地の42地点からは45点の表層堆積物試料を採集した.同湖北部の湖底表層堆積物は,一般に植物遺骸やシジミなどの淡水性二枚貝を含む暗灰〜灰褐色の砂質泥あるいは泥からなり,表層部には赤褐色できわめて軟弱な泥層が位置することがある.一方,周辺沖積低地からえられた試料は植物遺骸を多量に含む淡橙色あるいは淡灰色の砂質粘土からなる.
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