研究概要 |
前年度11月から12月にかけてトンレサップ湖北部一帯で実施した湖底柱状堆積物および表層堆積物,ならびに同周辺の沖積低地堆積物の採集・解析結果をふまえ,2001年5月に湖北部の2地点で柱状採泥を行い湖底堆積物を基盤に至るまで採集することに成功した.これと並行して湖南部およびトンレサップ川,メコン河で表層採泥を行った.これらの試料の予察的な解析の結果これまでに以下の事実が判明した. トンレサップ湖北部の2地点から採取した柱状試料は,表層部に軟弱な赤褐(8160)16黄褐色を呈する砂質泥層が位置し,この層には淡水性二枚貝を主体とする貝殻や貝殻片および植物遺骸が多量に含まれる.その直下には青灰(8160)16暗褐色を呈する比較的織密な泥層が連続し,これらには炭化植物破片の密集層や生物擾乱の痕跡が認められる.そして,柱状試料基底に位置する灰白色あるいは淡橙色砂質粘土層には植物遺骸が含まれることが多く,本層の直上には植物遺骸に富む濃褐色の粘土質砂層が発見されることから,本層はトンレサップ湖湖底堆積物の基盤と判断される.これらの柱状試料に含まれる花粉・硅藻群集組成,堆積物の放射性炭素年代値,ならびに砂質堆積物・粘土鉱物の組成について,現在それぞれの解析を進めているところである. 一方,トンレサップ湖南部一帯からは19点の表層堆積物試料を採集した.湖南部の表層堆積物は植物遺骸やシジミなどの淡水性二枚貝を含む暗灰(8160)16灰褐色の砂質泥あるいは泥からなり,表層部には赤褐色できわめて軟弱な泥層が位置することが多い.トンレサップ川中流域から採取された表層堆積物もほぼ同様の岩相を呈する.しかし,メコン河下流の表層堆積物は黒雲母を多量に含む中(8160)16粗粒砂から構成される.
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