研究分担者 |
谷口 真人 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (80227222)
山野 誠 東京大学, 地震研究所, 助教授 (60191368)
末田 達彦 愛媛大学, 農学部, 教授 (90109314)
木下 正高 海洋科学技術センター, 探海研究部, 副主管 (50225009)
大久保 泰邦 産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 主任研究官
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研究概要 |
地表面温度の時間的変動は地下の温度分布に影響を及ぼす.このことを利用すると,掘削孔内の温度分布の解析を行う事により過去の地表面温度の変動を推定することが可能となる.しかしこの方法だけでは,大局的な変動は抽出できても短周期の変動に言及することは難しい.また年輪年代学では,比較的分解能の高い古気候の復元はできるが,大局的な変動をつかむことは難しい.そこで本科学研究費では両者を有機的に結合し,さらに水文学的知見も動員して,極東地域における学際的な古気候復元プロジェクトを遂行した. 平成14年度の現地調査は8月にカムチャッカで実施した.平成12,13年度に測定した孔井での再測定を含めて,10本の孔井で地下温度分布の精密な測定を行った.これらの孔井では地下水試料も採取し,化学成分や同位体の分析を行った.さらに,平成13年度に設置した自動記録式温度計を回収し,通年の地表面および地下温度変動のデータを得ることに成功した. 3年間に測定した孔井内温度データについて,過去の気候変動を復元するインバージョン解析を行い,最近の約100年間は地表面温度が上昇してきたことを示す結果を得た.カムチャッカとの比較検討のため,琵琶湖の掘削孔についても温度検層を実施し,地表面温度の復元を試みるとともに,自動記録式の温度計と圧力計を孔井に設置し,長期観測を行った. 年輪年代学的な解析からは,平成13年度に採取したサンプルを用い約400年前(正確には1586年AD)までの年輪を同定することに成功し,気候変動の短周期変動のパターンの構築に成功した. このような成果を踏まえ,11月に愛媛大学にてInternational Paleoclimate Reconstruction Symposiumを開催した.このシンポジウムには外国人10人を始め,総勢26人が参加し,3日間にわたって極めて活発な議論を展開した.
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