研究課題/領域番号 |
12574005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
滝沢 智 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (10206914)
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研究分担者 |
片山 浩之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (00302779)
大垣 眞一郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20005549)
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キーワード | アンモニア / 地下水汚染 / ハノイ / 水供給 / トレーサー / 砒素 / 鉄(II) / 泥炭層 |
研究概要 |
平成12年度は、雨期の8月及び乾期の12月の2回にわたってハノイ市を訪れ、同市の水道局が水源としている地下水井戸、及び家庭用の浅井戸、表流水から採水し、アンモニア、鉄、マンガン、砒素、有機物濃度などを測定した。その結果、鉄、アンモニア、砒素、重炭酸塩濃度の間に高い相関関係が見られることがわかった。一般にアンモニア濃度の高い地域の地下水は、高濃度の鉄、有機物や砒素を含んでいた。これらの地下水は、溶存酸素濃度が低く、また酸化還元電位も-100mV〜-150mVと低い値にあることから、嫌気的な状態で鉄、有機物、アンモニア、砒素などの放出が起こっていることが確かめられた。嫌気的な条件においては、鉄は微生物の働きによりIII価からII価に還元される。この過程で、Fe(III)に吸着または共沈していた砒素が放出されるものと考えられる。このように砒素の放出については、Fe(III)からAs(V)の放出後、As(III)に還元されるとするものと、Fe(III)に吸着しているAs(V)が直接還元されるとするものがあり、現時点ではどちらの機構が支配的であるかは不明である。Fe(II)を検出した地下水からは高濃度の有機物が検出されたことから、このような鉄の還元反応には、有機物が電子供与体として働いているものと推定される。有機物の供給源としては、地表からの地下水浸透によるとする考えと、地下水中に存在する泥炭層が考えられている。地下浸透水の主たる供給源となりうる地表の養魚池や排水路を調べた結果、アンモニア濃度は地下水よりも低く、また、アミン類の分布が地下水とは異なることから、地層中の泥炭物質が有機物源である可能性が高い。有機物が嫌気的な分解を受けると、その一部が炭酸となって水中に放出される。また、アミノ基はアンモニアとなって水中に放出されることにより、鉄、アンモニア、有機物の濃度に相関が見られたものと考えられる。地域的に見ると、ハノイ市の北西部では地下水水質が良く、また、紅河にそった水源井戸地帯でもアンモニア濃度は低い。これに対して、同市の南部では、アンモニア等の濃度が高くなっており、これは同市の地下を北部から南部に流れる地下水の流れによるものと考えられる。
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