限られた水資源から、安全な水利用を実現するためには、年間の利用可能水量を把握して、各作物の作付可能面積をあらかじめ予測しておければ生産計画上有利であり、計画的な経済下では限定的水資源による最大の作物収量を生み出すことも可能になる。ミシュラ氏及びアブデルハーディ博士との共同研究では、昨年度行った青ナイル川の流量予測精度の向上結果を基に、10月〜3月低減期流量を求め、ダム湖蒸発量、利水量からダム貯水量と冬作の作付け計画について検討できるモデルの開発を行った。このモデルはまた灌慨用水の配分に関する実時間的な検討に使用できるほか、利用調整の困難な灌慨用水量と発電用水量との配分調整についても実時間的管理操作支援モデルとして活用できることを示した。 青ナイル川の全流域についてはUSGSのGISデータを基に3次元的立体構造がとらえられ、流域界及び水系網を明瞭に把握できるようになった。水文データについては、ハルツームのスーダン気象庁を訪ね、2測点のみであるが10年間の月降水量データ等を購入した。また、補完法による実蒸発散量の全国分布図を作成したので、今後これら実測データとの照合によって、計算精度の検証を進めていきたい、綿花畑における水消費の計測は継続中であり、新たに、灌慨用水量の実測を開始している。 稀少水資源の有効利用については、農業研究所のサリー教授らと共同研究を行っているが、降雨の一時的流出水を導入する集水型農業により、土壌水分を高め、水分ストレスに敏感なソルガムの収量を飛躍的に増大させる結果を得ている。また、ゲジラ大学アダム教授との共同研究では、農民参加による水管理手法の導入により、水資源の有効利用率と作物収量を向上させ、灌慨効率を高める結果となった。
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