研究概要 |
本研究では、国内外で調査を実施し地滑り津波の発生機構の解明および解析手法の確立を目的とし、非地震性津波の発生する可能性のある地域を評価する手法を提案することを目指している.今年は,現地調査,水理実験,数値モデルの開発を行い,以下に実績を報告する.まず,現地調査の対象地域は地中海沿岸であり,一昨年の1999年トルコ共和国イズミット・マーマラ海,昨年のトルコ共和国エーゲ海沿岸での調査を踏まえ,今年度はギリシャ共和国南エーゲ海で現地調査を実施した.この地域は,1956年にM7.5本震とM7.2余震が発生し津波も伴って発生したと報告されている.その規模は大きく海底地滑りを同時に発生した可能性が高いことが今回の調査でも明らかになった.海底地滑りの規模の推定が課題として残った.次に,地滑り津波発生モデルの基礎検討として2次元伝播のケースを実施し,方向の違いによる伝播特性の違いを検討した.波の回折現象が小さく,斜め方向や後ろ側に広がる波成分が小さいことが分かった.最後に,2層流のモデルの改良を行い,波数分散性を取り込むために,新たに基礎式としてブシネスク式を用いた2段階混合差分法による検討を行い、突入直後を除けばその伝播の再現性は非常に高くなったことが示された.課題としては,土石流突入後の土石流からの津波への影響が大きく,発生した短周期成分が過大に評価されていることがわかり,これを解決していかなければならない.
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