研究概要 |
研究初年度に当たり,主たる調査場所である西オーストラリア州レオノラ近郊のスタートメドーへ7月と11月の2回赴き測定実験を行った.測定はユーカリ3本,マルガ4本について行うことができた.これらのうち接地抵抗値の最低は幹半径が最大(33cm)のユーカリで210Ω,最高は幹半径が8.1cmのマルガで2.1kΩあった.樹木が生育している場所の大地比抵抗が異なると,同じ根の発達状態でも接地抵抗は異なった値となる.この影響を除くためその場所で大地比抵抗を測定し,接地抵抗の測定結果に補正を施した.大地比抵抗の接地抵抗への影響を除き,金属円板電極の半径(等価半径とよぶ)に換算し,これを実際の幹半径で割り半径比を求めた.半径比は幹の太さに対する根の発達度合いを示す指標と考えられる.その値は理論的に1以上になるはずであるが,すべてが1以下を示した.ユーカリの値0.5〜0.7に対し,マルガは0.1〜0.2と非常に小さかった.一方,日本におけるケヤキの測定においては,幹半径が数10cm以上では1以上の半径比が得られた.さらに,これらを他の特徴ある地域の樹木と比較するため,ハワイ島に1回赴き測定実験を行った.ハワイ島ではアカシアコア,ココヤシ,グアヴァ,ユーカリ,ノーフォークアイランドパインの5種,6本について各地で測定した.対象とした樹木の幹半径は4.4cm〜38cmである.半径比は最大で,10.2(ユーカリ),最少で0.4(ココヤシ)が得られた.ハワイ島は溶岩台地であっても乾燥地ではないので水分は多く根がよく発達しているのではないかと考えられた.測定したデータすべてについてみると半径比が1以下のものが圧倒的に多い.特に,西オーストラリアの乾燥地に生育するマルガの半径比は他に比べて極めて小さい.これらの理由としては,根は回りの土から植物体内に水分を吸収するが,逆に水分を土に放出しないバリア機構があるので,この生体組織の仕組みが電気的にはインピーダンスを高くしているからと推測された.
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