研究概要 |
地球温暖化防止のための緑化支援基礎研究として,西オーストラリア乾燥地レオノラ近郊のスタートメドー(STM)牧場、西海岸付近のツーロックスとコリー、一方大地が溶岩からなるハワイ島と土壌が湿潤な地域であるわが国で生育する樹木の根の電気接地抵抗測定し,それらの間で比較を行い乾燥地樹木の根の特徴について調査・研究を行った.研究期間中測定対象とした樹種と測定総本数は、STMで8樹種25本、ツーロックスで2樹種10本、コリーで1樹種11本、ハワイ島で9樹種13本である。異なった土地に生育する樹木間の評価法には,すでに開発されている根の等価半径r_eと実半径rの比である半径比r_e/rを用いた。半径比はSTMとコリーでは0.5以下、ツーロックスでは0.5以上であり、日本固有のケヤキは最低で0.5付近であった。ツーロックスでは他の地域の樹木に比べいずれも巨樹であり、半径比の最小値は一番大きかったが、これを除けば土壌が乾燥した地域における樹木の半径比は日本に比べていずれも小さな傾向を示した。溶岩台地でも半径比の最小値は0.5以下であり、乾燥地に準じた低い値が出ている。乾燥地またはそれに準じる土壌をもつ地域にこのように半径比の小さい樹木が存在する理由として次が考えられた。乾燥地では,一度根の組織に取り込んだ水分を土壌へ逃がさないための強固な機構が根の表皮にあり、これが電気的にインピーダンスを高くしているため,半径比が小さいのではないかということである。このことから、乾燥に強く地球温暖化防止に寄与する樹木の性質として、半径比の小さいことが重要であると考えられた。それと同時に生長速度が速く、大樹になることのできる樹木が地球温暖化防止に効率よく役立つ樹種と考えることができる。今後,このような樹種を地球上のすべての樹木から探索することが温暖化防止のための緑化支援に重要である.
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