研究課題/領域番号 |
12575005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 邦夫 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60158623)
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研究分担者 |
後藤 俊二 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (90093343)
榎本 知郎 東海大学, 医学部, 助教授 (80056316)
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キーワード | スラウェシ・マカク / 種間雑種 / 繁殖異常 / 交雑帯 |
研究概要 |
中部スラウェシ州のパンギビナンゲア保護林において、スラウェシマカク二種トンケアンマカクとヘックモンキー間の雑種個体群に関する現地調査を行った。昨年度に引き続き4〜5月、7〜8月、10〜11月、1〜3月に雑種個体からなる2群を継続観察し、雑種個体群の形態や行動上の特微を精査すると共に、それぞれの死亡率・出産率などの繁殖にかかわる資料を収集した。その結果、1)2群あわせて20頭の経産メスがいたが、年間の出産は7頭(出産率35%)、幼児死亡率は29%(2/7)であった。また経産メス中3頭が一年間に死亡した。2)これらの数字はこれまで南スラウェシ州カレンタ自然保護区で十年以上の期間にわたって継続観察されてきたスラウェシマカクの一種、ムーアモンキーの値と比較すると、出産率は低く、幼児死亡率は二倍、オトナメスの死亡率は格段に高いことを示している。3)オトナメスの死亡要因については不明な点が多いが、一頭は山産後三ヶ月にわたる脱肛が認められており、それが原因になったと思われる。4)下顎が大きすぎて噛み含わせが良くない、あるいは左右の額が歪んでいるなどの奇形個体が認められ、こうした発達以上がメスの繁殖にも影響している可能性がある。5) これまでの観察結果同様に外部寄生虫によると思われるひどい皮膚症状が認められる個体が多かった。南スラウェシ州のムーアモンキー、北スラウェシ州のクロザル、及びスラウェシマカク以外にも西ジャワ州のカニクイザルについて比較観察を行ったが、これらの個体群では雑種個体群のようなひどい状況は認められなかった。6)その他にも群れの中に多数存在するオスの中で争いが頻発していること、普通ならほとんど死亡しないコザルの中にも消失する個体が認められることなど、興味深い知見が得られたが、個体群の動態に関する調査であり、なお数年の継続観察が必要である。 母種個体群におけるコントロールとしての資料を得るために、今牢度はトンケアンマカクの捕獲調査を企画したが、インドネシア政府の許可担当部局が農林大臣にまでひきあげられ、また地域の政情が不安定だった点もあって、今年度は断念せざるを得なかった。これまで検討された範囲をこえて、より広い地城でトンケアンマカクの調査適地さがしを行ったが、まだ見つかっていない。
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