研究概要 |
インドネシア国西スマトラ州内のウルガド地区とシピサン地区内の計10箇所(7ha)の森林継続調査区において,毎木調査を実施した.内3箇所の調査区では,観測開始から20年目,19年目,17年目の資料をそれぞれ収集した.これら長期観測資料は,赤道直下の広い標高帯に広がった熱帯雨林の林分動態および気候変動への反応を解明する上で貴重な基礎資料となる.解析に向けて,いま資料を整理している. 20年目にあたる1-ha調査区を含め2ヶ所の調査区が本調査直前に地元民により皆伐されていた.現存している他の調査区も同様に危機的な状況下にあったため,対応機関であるアンダラス大学と協力し,対象地域の保護を州知事に文書で依頼し,さらに地元民をまじえた森林保護・保全に関するシンポジウムを開催し,対象林の保護を啓発した. 調査時期が対象林の優占種群であるカシ類の成り年にあたり,多様な種の殻斗果を多数観察・収集でき,同定作業が大きく前進した.これら試料から,殻斗果を形成している各組織の重量構成比が種間で大きく異なることが判明した.これらの資料は,林分動態の解析に不可欠となる構成種の繁殖戦略・habitat特性の解析に貴重な資料となる. 2000年7月にテンシオメータをアンダラス大学附属演習林内に設置し,土壌表面から15cmと30cmの2段階の深さで,土壌含水率を2時間間隔でモニタリングしている.これまで,強い乾燥期間が存在しなかったが,2週間程度少雨が続くと,とくに表層土壌では土壌水分吸引圧が20kPa程度上昇することが明らかになった.この観測と並行し,樹木の肥大生長速度をデンドロメータで観測し,落葉枝供給速度をリタートラップで観測しているが,これら速度と土壌含水率との相関関係は,これまでの観測では認められなかった.
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