研究概要 |
[分類と分布]:韓国の南漢江水系からRhodeus属の未記載種が発見された。オスの婚姻色が他種と比べて地味で赤色系を呈しない,オスの虹彩は黒色,などの特徴を示した。海南島からAcheilognathus longispinnis Oshima,1926が採集された。本種は従来,中国の学者(Woo,1964;Lin,1998)により,A.macropterusのjunior synonymとみなされているが,A.longispinnisは有効種であることが判明した。海南島からRhodeus spinalis Oshima,1926が採集された。本種の生物学的データは非常に少ない。婚姻色,産卵行動など研究中である。広西壮族自治区の崇左でRhodeus spinalisが採集され,広西壮族自治区における本種の分布が確認された。広西壮族自治区の陽朔でAcheilognathus meridianus(Wu,1939)が採集された。陽朔は本種のtype loca1ityである。今回の採集により,本種と近縁もしくは同種と考えられるA.lanchiensis (Herre and Lin,1936)との類縁関係研究が加速されることになる。[核型]:前年度にTanakia signiferに認められたアクロセントリック染色体は,T.koreensisおよびT.limbataには観察されなかったが,T.lanceolataに認められた。C-およびchromomycin A_3-バンド分析によりR.ocellatus ocellatusに地理的な染色体多型が認められた。海南島のR.spinalisの核型(n=24)が明らかにされたが,R.o.ocellatusとの間に相違が見られた。[遺伝子分析]:ニッポンバラタナゴの量的形質,mtDNA,genomic DNAについて遺伝的多様性の評価を行った結果,閉鎖水系に生息する集団は開放水系に生息する集団に比べて遺伝的多様性が著しく低いことが判った。また,前年度にgenomic DNAから単離された反復配列ファミリーを用いてサザンハイブリダイゼションを行った結果,R.atremius atremius,R.a.fangi,R.a.suigensis,R.ocellatus ocellatusおよびR.o.kurumeusでは相同な配列を多量に持っていたが,R.sinensis,A.rhombeus,A.macropterusおよびT.limbataではこのファミリーはほとんど検出されなかった。
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