研究概要 |
日本人の起源・系統を明らかにする上で日本列島周辺の人類集団の遺伝的特性を知ることは不可欠である。そこで,蛋白多型そしてDNA多型をもちいた集団遺伝学的解析により東アジア・東南アジア地域の様々な現代人類集団の遺伝的多様性が明らかにされてきた。また,それらを指標として各人類集団間の遺伝的類縁(系統)関係が推定され,起源が論じられてきた。しかし,過去に生じた集団の移動や拡散・古代人類集団間の遺伝的混合を無視して,起源や系統を論ずることは不可能である。 そこで本研究では古人骨試料からDNAを抽出・精製し,それらDNAの塩基配列を決定することにより,中国大陸・黄河流域に古代に生きていた人々の遺伝的多様性を直接明らかにし,古代から現代に至る日本およぴ中国の人類諸集団間における遺伝的類縁度を推定し,日本人の形成に関する理解の飛躍的進展をはかることを目的に研究を進めた。 昨年度までは中国・河南省・商代晩期の遺跡から出土した古人骨試料を研究対象の中心としていたが,本年度は同じく河南省の商代早期およびそれ以前(夏代)の遺跡から出土した古人骨試料の収集をおこなった。収集した古人骨試料はDNA分析のための前処理としてのクリーニング作業まで終了した。また,昨年度までに収集・処理した黄河下流域・商代晩期の古人骨試料に関連する考古学資料および未発表の研究情報の収集に当たった。さらに,これまでに得た古人骨DNAの塩基配列を用いた数理解析のための新たなコンピュータ・プログラムを複数作成した。
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