本研究ではアジアの稀少民族と、地域示準民族、特に同地域における基層民族に近いものに焦点を当てた試料収集・細胞の保存・株化・性状解析をおこなう。さらに、ヒトの多様性や適応現象の比較研究対象としてアジアの霊長類マカクの調査を推進し、生命科学諸分野で活用できる人類共通の財産とする。 1)継続調査をおこなっている南部の狩猟採集民(マニ)に関しては、外国人研究協力者のデュアンチャン・パイブンを招聘し、日本の遺伝的研究成果とあわせ、言語資料から集団間関係を解析する方向付けをおこなった。 2)昨年度より手がけたタイ南部の漂海民については、ビルマを中心とするモーケンとマレーシアを中心とするオランラウトがタイ南部アンダマン海側で分布し、プーケ島において住み分けていることを確認した。 3)民族疫学的視点から、タイ南部に高発するTリンパ腫について、ウイルスと宿主両面から検討した。 4)ヒトの対照として広範囲な生息域と高度の適応性を示すマカクについては、タイ東北部において2群の調査をおこなった。1群はアカゲザルの群にブタオザルの成獣雄が1頭混入しアルファ雄となっていた。誘導パタンを調べ捕獲調査のためのデータを集めた。もう1群は、アカゲザルとカニクイザルの混血群で、一時捕獲調査をおこない生体情報・血液試料を得、ヒト皮膚色関連遺伝子の検索をすすめた。
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