研究概要 |
土壌試料の採集はアマゾン地域と東北部を中心に9州の27地地域と隣接するベネズエラの2地域で合計3932試料を採集した。土壌からのカビ毒生産菌及びヒトの病原真菌の分離はレシフェ市のペルナンブコ・カトリック大学の微生物学実験室で土壌平板法で行った。最も多数分離されたカビ毒生産性及びヒトの病原真菌として報告されている種はAspergillus flavus, A.fumigatus, A.terreus, A.section Nigriに分類される種、Emericella spp.,Neosartorya spp.などであった。A.fumigatus, Neosartorya spp.などは湿潤な地域の土壌から多数出現したが、半乾燥地帯や乾燥地帯の土壌からの出現は少く、Emericella, A.flavus, A.nigerなどは半乾燥地帯や乾燥地帯土壌からは多数出現したが湿潤地帯土壌からの頻度は低かった。今回の調査でNeosartorya属は10種が出現した。N.indohii, N.tsurutaeはアマゾン河流域の熱帯雨林の土壌から分離され新種として報告した。Neosartoryaの系統的研究は16種のNeosartoryaと近縁菌についてβ-tubulinの遺伝子を用いて系統関係を分析した。その結果、Neosartoryaは大きく3グループに別けられる事が知られた。この研究はハンガリー、オランダの研究者との協同研究で行った。サンターレン郊外のコーヒー圃場でコーヒー豆のA.ochraceusによる自然汚染を始めて発見した。豆には甲虫の食害も見られた。自然汚染菌によるochratoxin A(OCTA)生産性と、同時に分離されたAspergillus sect.Nigriの種のOCTA生産性について検索した。自然界におけるコーヒー豆のOCTA生産菌による汚染の実体を初めて明らかにした。その結果、供試したすべてのコーヒー豆からOCTAが検出され、分離されたすべてのA.ochraceusからOCTAの生産性が認められた。
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