研究課題/領域番号 |
12575030
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
応用獣医学
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
堀内 基広 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 助教授 (30219216)
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研究分担者 |
村松 康和 酪農学園大学, 獣医学部, 講師 (50254701)
石黒 直隆 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (00109521)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2002
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キーワード | プリオン / スクレイピー / PrP / モンゴル / 遺伝子型 / PCR / BSE |
研究概要 |
モンゴルは牧羊に関して悠久の歴史を有し、羊の飼育頭数は1200万頭にのぼる。同国は将来、世界の畜産物供給基地にも成りえる可能性を有する。従って、モンゴルにおける家畜プリオン病の疫学調査は、同国の畜産物の安全性を調べる上で重要な知見をもたらすと考えらえる。 研究期間中にモンゴル中央部、西部、および東部に赴き、羊スクレイピーの臨床症状などを説明し、該当する羊の存在について聞き取り調査を行なったが、スクレイピーを疑う症状を呈する羊に関する情報は得られなかった。同時に、現地獣医師に神経症状を呈した羊の延髄の採取を依頼した。回収した試料からウエスタンブロットにより異常型プリオン蛋白質(PrPSc)の検出を行なったが、全て陰性であった。回収できた試料の数は十分ではないが、モンゴルにおけるスクレイピーの存在を確認するには至らなかった。 モンゴル各地で、9品種(Khalkh、Yeroo、Orkhon、Khangai、Sartuul、Govi-altai、Bayad、Darhad、Sumber-Karakul)、計470頭の静脈血を採取して、有核細胞から染色体DNAを回収した。PCRによりPrP遺伝子の蛋白質コード領域を増幅してPrP遺伝子の塩基配列を解析し、最終的にPrPアミノ酸型を決定した。PrPコドン171のGln/Argのアミノ酸多型はスクレイピー感受性/抵抗性を規定することが知られている。Gln/Glnのアミノ酸型を有する羊はスクレイピー感受性、Gln/ArgおよびArg/Argを有する羊は抵抗性となる。本研究で解析した品種では、58〜97%が感受性のアミノ酸型である171Gln/Glnを有していた。またスクレイピー抵抗性を付与する171Arg/ArgもしくはArg/アミノ酸型の浸透度は高い品種でも31%であり、特に171Arg/Argを有する羊は僅か数%であった。この結果は、モンゴルではスクレイピー感受性の羊が飼育されていることを示している。スクレイピー病原体の環境抵抗性が著しく強いこと、潜伏期間が長く摘発が困難なこと、また出産後母子の接触が濃厚な時期に幼獣が感染を受けることなどから、汚染地域の清浄化は困難である。今回の調査ではスクレイピーの存在は確認されなかったが、今後も継続的なサーベイランスが必要であるとともに、羊の輸入に伴うスクレイピーの侵入に対する防疫対策が必要と考えられる。また、本研究の成果はPrP遺伝子型を指標としたスクレイピー抵抗性羊の選抜飼育にも有用な知見を提供するものと考えられる。
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