研究概要 |
初年度の2000年は8月7日から8月24日の18日間に亘って中国青海省に出張し、チベットヒツジについて研究を行った。ヒツジは中国青海省の高原に放牧しているものを用い、標高別に海抜3,000mの大通で雄7頭、3,750mの大武で雄7頭の合計14頭である。3,000m地点のチベットヒツジと3750m地点のチベットヒツジを比較して、右心室の重量比(RVW/LVW)を比較してみると、それぞれ0.32±0.017,0.33±0.017で3750m地点のヒツジがやや高値を示すが、その差は僅かで有意差がみられない。同様に3,000mと37,50m地点のヒツジについて、ヘマトクリット(Ht)、動脈圧(Psa)、肺動脈圧(Ppa)、動脈圧に対する肺動脈圧の割合(Ppa/Psa)および心拍出量(CO)を比較してみると、Htは37.1±3.62%に対して39.0±3.82%、Psaは108.4±25.9mmHgに対して99.6±16.4mmHg、Ppaは28.3±10.0mmHgに対して29.8±4.3mmHg、Ppa/Psaは0.26±0.05に対して0.31±0.07、COは7.16±1.12l/minに対して7.13±1.09l/minとなっており、Psa以外のいずれの項目も3750m地点のヒツジがやや高値を示すが、両群の間に有意さが認められない。 高地環境下では右心室肥大を中心とした肺循環系に適応的変化がみられる。その点からみると、右心室の重量比(RVW/LVW)、ヘマトクリット(Ht)、肺動脈圧(Ppa)、動脈圧に対する肺動脈圧の割合(Ppa/Psa)などは高地に生活しているものほど高い値を示すのが一般であるが、結果はすでに述べたように、その差は僅かで有意差がみられないのがチベットヒツジの特徴と言える。
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