研究概要 |
タイ王国の東北部は肝内胆管がんの頻度が世界でも極めて高く、Opisthorchis viverriniという肝吸虫の感染と食物中の発がん物質の摂取が重要な因子であるとされている。しかしこの肝内胆管がんの発がん過程に関するゲノム変化の実態はよく分かっていない。 この発がん過程にDNAのミスマッチ修復がどのように関与しているかを調べるために、蛍光標識したプライマーを用いてのPCRとレーザースキャニング法を用いた高感度の方法を用いて、核及びミトコンドリアDNAのマイクロサテライト不安定性(MSI)を調べた。症例は、肝内胆管がん24症例でがん部と非がん部の組織のDNAを抽出し、ミスマッチ修復に関連するhMSH2及びhMLH1、ミトコンドリアのNADH dehydrogenase subunit 1とsubunit 5、D-loop領域などを含む12箇所のマイクロサテライト部位について調べた。 その結果、MSIは、D2S123(12.5%),D3S1611(4.2%),D17S250(8.3%)であり、他の部位ではMSIは認められなかった。また、informative casesについてLOHを調べたところ、D3S1298(20%),D3S1561(25%),D5S346(30%),TP53(14%)であった。 これらの結果、タイ王国における寄生虫感染関連胆道がんの発がんは、MSIが低頻度であることがわかり、発がん過程においては、大腸発がんとは異なり、ミスマッチ修復機構が関係する胆道がんは、少ないことが明らかとなった。 その他のゲノム変化としての染色体DNAコピー数の変化は、CGH解析を行ない、現在論文投稿中である。 また、発がん剤の代謝酵素の遺伝子多型による酵素活性の差が胆道がんの感受性の個人差を決めているとの作業仮説を立てて、症例・対照研究を行なっており、現在データを集計中である。
|