研究概要 |
鼻腔NK/T細胞リンパ腫は鼻腔を中心とする上気道に壊死性、肉芽性病変をきたす致死性疾患である。これまでの私共の疫学調査により本疾患は日本、韓国、中国を中心とする東アジア地区に多発していることが判明している。 とりわけ韓国での発生は高く、本邦、中国の約8倍に達している。 一方、本疾患はほぼEpstein-Barr(EB)ウィルス陽性であり、これは日本、韓国、中国例のいづれにおいてもそうである。又、韓国での本疾患の発生頻度は顕著な減少傾向を示している。以上のことは本疾患の発生への環境要因の関与を考えさせる。そこで本邦と中国例の腫瘍細胞におけるp53,c-kit変異の有無およびその頻度をPCR-SSCP法を用いて検討したところ、p53,c-kit変異とも本邦例(20%,22%)に比べて中国例(84%,71%)で高かった。一方、沖縄で農薬従事している父子に発生した本疾患を発表した。これは本疾患の家族内発生を報告した最初の報告である。この父子はビニールハウス内で大量の農薬を使用していた。以上の所見は本疾患発生と環境要因との関連を示唆している。
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