研究概要 |
平成13年度の実績は以下の通りである。1.2000年8月,12月,2001年4月(後2回の採血は共同研究者のGraeff-Teixeira教授が実施した)の計3回Santa Catalina州Nova Itaberaba市で採血した住民127〜173人分の血清を用いてELISAによりコスタリカ住血線虫(コ線虫と略)に対する抗体保有状況(有病率)を調べた。その結果,有病率は8月の22%から翌年の4月には53%に達し,4ヶ月毎の発生率は24〜30%であった。アンケート調査の結果,感染はナメクジの粘液で汚染された生野菜の摂取や釣りの餌にナメクジを利用することによる手指の汚染などに起因することが示唆された。2.Gelatin particle indirect agglutination test(GPAT)はコ線虫の粗抗原を用いる限り,マウスのコ線虫症の抗体検出には有用であるが,マウス以外の動物やヒトのコ線虫症の診断には不適で,GPAT用抗原の精製が必要である。3.コ線虫成虫の排泄物・分泌物(ES)中の162kDの抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体(MAb;IgM isotype)を確立した。本MAbを用いるdot ELISAにより,感染スナネズミと患者血清中に循環抗原を検出(検出率40〜43%)することが可能であった。しかし,検出感度を上げるための改良ならびに広東住血線虫症との弱い交叉反応の除去などが今後の課題である。他に数クローンを現在選別中。4.各種近交系マウス,B10 congenicマウス,IFNr knockoutマウスを用いてヒトのコ線虫症のモデルになりうるマウスの系統を探索したところ,第1期幼虫の糞便内排出(fecundity)の少ない系統はBALB/c,DBA/2,B10. D2で,前二者は病態の悪化が顕著で,死亡率も高かった。これに対してB10. D2は病態の悪化が少なく,好酸球応答が高いという特徴があり,これら三系は今後ヒトの本症モデルの確立に役立つ可能性がある。C57BL/6とC3H/HeNは高いfecundityを示し,高感受性系統である。5.DNA診断法の開発を目指して,感染動物と未感染動物の血液材料から抽出したDNAにサブトラクション法を応用し,いくつかのsubtracted bandsを得たが,この中に虫体ゲノム由来DNA断片が含まれているとの明確な証拠はまだ得られていない。現在differential screening法でさらに検索中。
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