研究概要 |
南ブラジルにおいてコスタリカ住血線虫症の疫学ならびに血清疫学的調査を行い,さらに,本症の診断法,免疫病理に関する実験的研究を行った.得られた成果は次の通り。1.南ブラジルではSarasinula linguaeformis, Phyllocaulis variegatusが主要な中間宿主となっており,我々は新たにDeroceras laeveが本虫の中間宿主になることを明らかにした。ナメクジにおける感染率は季節的変動が著しく,S. linguaeformisの感染率は8月に1.5%,12月に24%であった。血清疫学的調査をELISA法を用いて行ったところ,Nova Itaberaba市住民の有病率は8月に22%,12月に35%,4月には53%であり,4ヶ月毎の発生率は24〜30%であった。アンケート調査の結果,感染はナメクジの粘液で汚染された生野菜の摂取,釣りの餌にナメクジを用いることによる手指の汚染などに起因すると考えられた。2.成虫粗抗原を用いたgelatin particle indirect agglutination testは,感染マウスの血清では有用であったが,マウス以外の動物やヒトの症例の診断では非特異的反応が出現する他,広東住血線虫症にも弱い交叉反応を示すため,抗原の精製など,改善が必要であった。本虫の排泄物・分泌物抗原の内,162kD抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体(Mab)を確立し,このMAbを用いたdot EHSAにより感染スナネズミと本症患者血清中に循環抗原を検出することができた。しかし,検出感度をさらに上げること,ならびに広東住血線虫症との弱い交叉反応の除去などに改善が必要と考えられた。DNA診断法の開発を目指して,感染動物と未感染動物の血液材料から抽出したDNAにサブトラクション法を応用し,いくつかのsubtracted bandsを得たが,この中に虫体ゲノム由来DNA断片が含まれているとの明確な証拠はまだ得られていない。現在differential screening法でさらに検索中である。3.IL-5 transgenicとnon-transgenic miceを用いた実験から本虫感染に対する宿主の抵抗性,fecundity,腸の病理所見に好酸球が関与することが分かった。各種近交系マウス,B10 congenic miceを用いた実験からBALB/c, DBA/2,B10.D2はfecundityが低く,抵抗性で,C57BL/6とC3H/HeNはfecundityが高く,感受性が高いことが分かった。前者の3系統は今後,ヒトのモデル開発に役立つと期待される。
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