研究課題/領域番号 |
12576013
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中山 伸一 神戸大学, 医学部, 助教授 (00252776)
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研究分担者 |
石井 昇 神戸大学, 医学部, 教授 (10168172)
松田 均 神戸大学, 医学部, 助手 (20294217)
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キーワード | 災害医療 / 災害医学 / 地震災害 / 救急医療 / 疫学 / 災害対応 |
研究概要 |
(平成12年度の研究計画) 台湾大地震に際し、神戸大学は災害救援医療チームを派遣したが、その際出会った台湾各関係機関の共同・研究者の協力のもとに、初年度はまず台湾で初期対応についてのデータを収集することに主眼を置いた。 (平成12年度の研究成果) 台湾の共同研究者と平成13年9月28-30日にVanvouverで開催された第5回Asia-Pacific Conference on Disaster and Emergency Medicineにおいて、資料をもちより分析し以下のことが明らかとなった。 1.台湾大地震の規模はMagnitude7.6と阪神・淡路大震災のMagnitude7.2に比べ大であったが、人的被害は死者2329名、負傷者8722名とむしろ少なかった。地域別の死亡者数では台中県の1170名、南投県の889名と続くが、死亡者数の人口に対すや比率では、台中県0.08、南投県0.16で、阪神・淡路大震災の神戸市における0.26に比較し小さかった。 2.この最大の要因として、阪神・淡路大震災が都市直下型であったのに対し、台湾大地震が都市、山間部型であったことがあげられる。 3.しかし町、村単位で見ると、中寮郷では0.99、東勢鎮では0.54と死亡者数の人口に占める割合は神戸市の場合より高く、激震地での被害の大きさを示していると考えられた。 4.災害時における初期医療対応の観点から傷病者の転送について調査したところ、例えば東勢鎮の農会病院では、地震当日に受け入れた730名の傷病者のうち半数金超える367名を当日に、それ以後9日間にわたり総計553名を転送していたが、死亡例は地震当日の80例のみにとどまっていた。これは阪神・淡路大震災時被災地外への転送例がわずかであったことと対照的である。 5.以上の結果から、台湾大地震での初期災害医療対応は、山間部の激震地を除けば、阪神・淡路大震災に比し迅速な初期対応がなされたと評価できる。 6.その要因として、被災地の行政機能の被害が少なく災害対策本部の早期立上げが可能であったこと、軍隊組織を含め指揮命令系統の一元化がはかれたこと、またそれにより傷病者、物資搬送にヘリコプターの有効活用ができたこと、ボランティア組織による早期からの自主的な医療救援活動などが指摘できる。
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