研究分担者 |
大森 裕 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (80335439)
中村 雅彦 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (30324916)
石井 昇 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10168172)
松山 重成 神戸大学, 医学部附属病院, 助手 (10346273)
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研究概要 |
当初の計画では時相を災害初期だけでなく、より長期にわたっての分析を加える予定であったが、さまざまな事情から残念ながら台湾を訪れての現地調査とデータ収集を実施することが本年度は不可能であった。そこで本年度は、平成13年度までの研究成果で用いたWADEM(World Association for Disaster and Emergency Medicine)の提唱するUtstein Template(外傷での重症度評価法におけるAISのように、災害による医療対応能力への被害のひどさをスコアリングする方法で、各項目の最高点75点が最も被害甚大である)を用いた分析を、対象を拡大して、阪神・淡路大震災以後の2000年に日本で発生したもう一つの地震鳥取県西部地震を加えて行った。すなわち、阪神・淡路大震災と台湾集集大地震のみに限定せずに、ほぼ同じマグニチュードという共通項を有する3つの震災において、災害の程度と初期災害医療対応についてUtstein Templateをもちいて評価比較した。 その結果、3者の医学(医療)的指標におけるスコアを、医学医療面、公衆健康面、医療機関への影響、災害への準備、災害対応能力の低下の5つの項目別に計算すると、それぞれ順に、阪神・淡路大震災では75点,34点,17点,48点,41点(平均43点)、台湾集集地震では48点,17点,6点,12点,9点(平均18.4点)、鳥取西部地震では6点,2点,8点,57点,4点(平均15.4点)となった。以上より、地震直後の災害医療対応において上記のいずれの観点からも、阪神・淡路大震災、台湾集集地震鳥取西部地震の順に被害甚大、対応不十分であったことを客観的に数値化して示すことができた。また、残念ながら、日本における災害へのpreparednessが台湾のそれより劣り、かつ阪神・淡路大震災以後に起こった鳥取西部地震においても災害準備への改善傾向が認められなかったことが特筆すべきこととして指摘できた。
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