研究概要 |
研究実績 1)女性のHIVエイズからの自衛的回避・予防行動とそれに関わる社会文化経済的要因に関する研究「エイズの女性化」すなわちHIV感染者中の女性比率の増加は世界的傾向であるが、サブサハラアフリカでは特に顕著である。本研究では女性がHIV感染を自衛的に回避するには何が重要かという視点から、サブサハラアフリカ3ヶ国(マリ,ザンビア,マダガスカル)における女性のHIV感染防御に関連するリプロダクテイブヘルス要因と社会経済文化要因を探ってきた。 成果:ザンビアとマリでは質問したリプロダクテイブヘルス要因,社会経済要因のうちで、HIV感染の有無に関連していたのは教育年数で,ともにHIV感染女性のほうが非感染女性に比べ有意に教育年数が高かった。マリではこの他にHIV感染者は最初の性体験年令が有意に高く、妊娠数,輸血歴,性器切除,一夫多妻はHIV陽性者に多いという結果は出なかった。教育年数はHIV予防としてのCondom useに3ヶ国すべてで有意の相関がなかった。ザンビアではHIV感染経路知識のうち血液感染にくらべ精液や膣分泌液がHIVを移すという性感染経路知識が欠損している傾向を示す結果が出ており性感染知識は教育年数が上がっても高くはならなかった。Condom useと最も関連していたのはその女性が収入貢献あるいは自分で収入を得ているかどうか、であって自己収入があると答えた人で有意にCondom useが高かった。この他マダガスカルでは子どもの死亡を最低1人は経験した人はしていない人に比べCondom useが有意に低かった。本研究の結果は「女性の教育」という子どもの健康にとっては有効であると示され、万能視されてきたものがアフリカの女性のHIV回避には必ずしも有効に働いていない、という警告を示しているがぐこれをただちに教育の否定に結びつけるのではなく教育というエンパワメントがもっとリプロダクテイブヘルスやHIV予防に有効に働くメカニズムを探る必要がある。また必ずしも教育の結果ではない自己収入・経済的自立性を持った女性でHIV防御行動が取れているというアフリカ3ヶ国で共通にみられた結果を重視し、女性のエイズ克服対策の中に位置づけていくべきである。 2)HIV母子垂直感染予防対策の効果向上に関する研究 感染してしまった女性から次には子どもへの感染を予防する対策に関連する研究は以下のようなものを行ない、それぞれ解析・報告した。 1.母子感染・母乳感染経路知識と授乳方法選択についてのザンビアの妊婦におけるKAP・知識行動調査。 2.ザンビアにおけるHIV母子感染予防プログラム後の母子ケアの改善とHome-based careによる授乳法支援で母乳感染防止を目的とする介入研究の計画。 3.妊婦の細菌性膣症および絨毛羊膜炎の有無がHIVの子宮内胎児感染に及ぼす影響についての研究。 4.フランスのアフリカ移民を主としたHIV母子感染予防対策の現状調査。
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