研究概要 |
本年度は、チェルノブイリ原子力発電所の事故時1986年に、急性放射線障害(ARS)を発症した人々についての医学調査を主に行った。調査対象はキエフ在住の186名であり、大半は^<131>I,^<132>I,^<134>Cs,^<137>Csによるβ及びγ線の外部照射を受けた人々で、急性放射線障害度I〜IIIの96名と、障害度を特定し得なかった90名である。障害度I(ARS-1;0.8〜2Gy)1名は1996年にmyelodysplactic syndrome(MDS)を発症したが現在も生存中である。ARS-2(2〜4Gy)は2名で、1名は1990年にCMLを発症し同年に死亡した。他の1名は1998年に急性骨髄性白血病(AML,M4)を発症し同年に死亡した。ARS-3(4.1〜6.3Gy)は2名で、1名は1993年MDSを発症し同年に死亡しており、他の1名は1995年にMDSを発症、1996年に死亡した。この他障害度を特定出来なかった5名のうち4名は1986年に2名が再生不良性貧血を発症し、1名が1987年に死亡し、他の1名については現在消息不明である。又他の1名は無顆粒球症を発症したが現在消息不明、1名は血小板減少性紫斑病を発症し、脾臓摘出により現在も生存中である。他の1名は1987年に無顆粒球症(好中球減少症)を発症し現在経過観察中である。又本年度の健康診断にて1名の好中球減少症患者を見出した。現在、リンパ球サブセットを解析中である。 ARS患者の大多数は精神的及び肉体的な不定愁訴を持ち、又経済的な問題を抱えている。ARS患者の大多数は不能者として扱われており、就労出来ず、年金生活をしているのが実態である。
|