昨年度の調査で収集したサンプルからゲノムDNAを抽出し、糖尿病及び肥満に関連する遺伝子多型を解析した。本年度は糖尿病発症に抵抗すると考えられているperoxisome proliferator-activated receptor-γ2 (PPARγ2)遺伝子のPro12Ala多型およびエネルギー消費に関係する脱共役蛋白質(uncoupling protein : UCP)のうち、褐色脂肪に存在するUCP-1遺伝子の翻訳開始点から112塩基上流にあるA→C多型をPCR-RFLP法により解析した。対象は、バリ島、ジャワ島(スラバヤ、ジョグジャカルタ)の3地域である。PPARγ2遺伝子のPro12Ala多型の解析によりこの多型はバリ島には全く存在しないことが明らかになった。スラバヤ及びジョグジャカルタではヘテロ変異がそれぞれ15.6%、2.5%認められ、ジャワ島全体としては4.6%であった。本多型はバリ島よりもジャワ島に多く、ジャワ島内ではジョグジャカルタよりもスラバヤに多いことが明らかになった。このことはバリ島の集団は2型糖尿病易発症傾向にあること、またジャワ島内でも地域により頻度が異なることを示した。次に、UCP-1遺伝子A→C多型を地域別で比較すると、この多型もバリ島よりもジャワ島で変異アレル頻度が高く、ジャワ島内ではジョグジャカルタよりもスラバヤの方が、変異アレル頻度が有意に高かった。従ってUCP-1遺伝子のA→C変異は、インドネシアにおいて地域差があると考えられた。またBMIにより非肥満群、軽度肥満群、中・高度肥満群の3群に大別し、BMIとUCP-1遺伝子のA→C多型の関連を解析したが、有意な相関は認められなかった。(この結果は日本糖尿病学会学術集会で発表予定である。)
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