糖尿病および肥満発症関連遺伝子の多型をPCR-RFLP法を用いてインドネシアと近隣のパプアニューギニアの住民を対象として解析した。 その結果 (A)インドネシアにおいては(1)UCP-1遺伝子の-112A→C多型は肥満と関連しなかったが、Cアレル頻度はバリ島原住民よりジャワ人に高く、日本人の頻度に匹敵した。(2)PPARγ2遺伝子のPro12Ala多型頻度は欧米人の1/2以下であり、特にバリ島原住民では皆無であった。(3)ミトコンドリアDNAの3243A→G変異は皆無であった。(4)adiponectin遺伝子のSNP45T→G多型はバリ島原住民において肥満との関連がみられた。耐糖症との間にも関連があった。SNP276には関連がなかった。(5)UCP-3遺伝子の-55C→T多型はバリ島およびイリアンジャヤ原住民において肥満との関連がみられ、また耐糖能とも相関した。 (B)パプアニューギニアにおいては(1)glycogen synthase遺伝子のexon10のMet416Val多型は肥満との関連はなかったが、日本人より高頻度であった。(2)PPARγ2遺伝子のPro12Ala多型は皆無であった。(3)β_3 adrenergic receptor遺伝子のTrp64Arg多型は肥満者に高かった。(4)UCP-1遺伝子の-112A→C変異は稀であり、Met229Leu多型頻度は皆無であった。(5)UCP-3遺伝子の-55C→T多型は肥満と関連しなかった。(6)TNFα遺伝子の-308G→Aおよび-238G→A変異の頻度は皆無であった。(7)adiponectin遺伝子のSNP276T→G変異とGアレル頻度は肥満と関連しなかったが日本人より高かった。 以上の結果から、インドネシアやパプアニューギニアでも、欧米や日本で報告されている遺伝子多型がみられるが、その頻度は地域、民族により異なることが判明した。また、これらの国々の糖尿病有病率の最近の著しい上昇は急激な西欧化による生活環境・習慣の変化のみならず、遺伝子上発症素因を有していることによると考えられた。
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